校長室より

2023年7月の記事一覧

鉄は熱いうちに打て(校長室より No.16)

本日、第1学期終業式を実施しました。
70日間の1学期を終え、明日から42日間の夏休みに入ります。
安全には最大限の注意を払いつつ、自分を大きく伸ばせる、そんな夏休みにしてほしいと思います。
校長式辞の主な内容は、以下のとおりです。


1学期を振り返ってみると、新型コロナウイルス感染症が5月8日に5類に移行したことにより、、学校にも当たり前の日常が戻ってきた。
学校生活の様々な場面で、今まで以上に皆の笑顔があふれていたことをうれしく思う。
一人一人が、毎日の授業や部活動などに一生懸命に取り組み、本当によく頑張った。
その皆の頑張りが、通知表には記されている。
担任の先生がどんな思いで書いたのか、その思いを察しながら読んでほしい。

皆にとってこの1学期はどのような学期だったか。
1年生は、入学して3か月半が経ったが、新しく始まった中学校生活はどうだったか。
2年生は、中堅学年として、また、1年生のよき先輩として、その役割を果たせたか。
3年生は、本校の顔である最高学年として、そしてまた、受験生として全力で取り組めたか。
それぞれに課題はあったと思うが、どの学年も成長の跡が見られ、心身ともにたくましくなったと思う。
特に、今年度新たに定めた3つの約束、「時を守る 場を清める 礼を正す」は、しっかりと守れたことと思う。

明日からの夏休みは、自由な時間がたくさんあり、その使い方によっては、自分を大きく伸ばすチャンスである。
そこで皆に、「鉄は熱いうちに打て」という言葉を贈る。
あの固い鉄でも、真っ赤に熱すると、たたいて曲げたり、伸ばしたりすることができる。
また、真っ赤になった鉄をたたくと、激しく火花が散る。
この火花には不純物が含まれているので、何度もたたくことで、純度を高め、質の高い鉄を作り出すことができる。
これを「鍛錬」と言う。
しっかりと練習や稽古をすることも鍛錬というが、真っ赤に焼けた鉄を鍛えることが語源なのである。
しかし、冷めてしまうと曲げたり伸ばしたりすることは難しく、何より冷めた鉄をたたいても鉄の質を高めること、つまり鍛錬はできない。

ここから転じて、「鉄は熱いうちに打て」の意味は、「人は柔軟性のある若いうちに鍛えることが大事だ。」とか、「物事は時機を逃さないで実行することが大切だ。」となる。
今日、1学期が終わり通知表をもらう皆は、まさに「熱い」状態である。
今こそ、「鉄は熱いうちに打て」、「鍛錬」のときである。
この時期を逃さず、厳しさを持って自分と向き合い、大きく飛躍してほしい。

反面、「水は低きに流れ、人は易きに流れる」や「三日坊主」ということわざがあるように、人間は弱い生き物でもある。
もし、夏休み期間中、自分の弱い心に負けそうになったら、頑張ってる友達やおうちの人に相談し、刺激をもらってほしい。
また、担任や部活動の先生に、気合いを入れ直してもらうのも良いと思う。
もう一度言うが、今が鍛錬のときである。
明日から始まる夏休み、自分自身の夢の実現に向けて、自分の可能性を信じて、「今だからこそできること」、「今しかできないこと」に全力で取り組んでほしい。
東中のスローガンは、「心意気 ~東中PRIDE~」である。
夏休み中、心意気を持ってたくさんのことに挑戦し、鍛錬によって一段とたくましくなった皆さんと、2学期の始業式で会えることを楽しみにしている。

ぼくが ここに(校長室より No.15)

ぼくが ここに  まど・みちお

ぼくが ここに いるとき
ほかの どんなものも
ぼくに かさなって
ここに いることは できない

もしも ゾウが ここに いるならば
そのゾウだけ
マメが いるならば
その一つぶの マメだけ
しか ここに いることは できない

ああ このちきゅうの うえでは
こんなに だいじに
まもられているのだ
どんなものが どんなところに
いるときにも

その「いること」こそが
なににも まして
すばらしいこと として


これは、「ぞうさん」や「やぎさんゆうびん」、「一年生になったら」などの童謡の作詞で知られる、詩人「まど・みちお」さんの詩です。
「誰もが大事に守られているたったひとりの存在であり、そこにいること自体が何よりもすばらしいことなのだ。」と、まど・みちおさんは伝えてくれているのだと思います。
世界でたった一つのかけがえのない命を、どうか大切に

おうちの人や先生にも相談できない悩みがあったら、下記に電話してください。
チャイルドラインとちぎ 0120-99-7777
栃木いのちの電話 028-643-7830
こころのダイヤル 028-673-8341
いじめ相談さわやかテレホン 028-665-9999

 

群青忌(校長室より No.14)

「滝落ちて群青世界とどろけり」
これは、水原秋櫻子(しゅうおうし)の代表的な俳句で、秋櫻子が62歳、昭和29年(1954年)に詠んだものです。

この句にある滝は、和歌山県東牟婁郡那智勝浦町の「那智滝(なちのたき)」です。
那智滝は、一段の滝としては落差日本一で、日光の「華厳の滝」などともに日本三名瀑の一つに数えられています。

「群青世界」という言葉は、秋櫻子がこの句を詠むにあたり作った言葉です。
群青とは、深い藍青色を言います。那智大滝の水や滝壺の青、熊野の山々の古杉の葉の青、そして空の青と、正に群青の世界であり、青が目に飛び込んでくる視覚の世界です。

また、「とどろけり」は、高いところから水が落ちてきて、滝壺で音がとどろいているという情景ですが、聴覚の世界であると同時に、水しぶきが掛かってくるよな触覚の世界でもあります。
全体として、五感に訴える句となっています。

「滝落ちて群青世界とどろけり」
秋櫻子は、何を思ってこの句を詠んだのでしょうか。
自然の偉大さや自然への畏敬の念、悠久の時間、熊野の山々と滝から受ける神秘性、それとも自分もあの滝のように雄々しく生きたいという思いでしょうか。

来週、7月17日は秋櫻子の命日です。俳句の世界では、7月17日をこの句にちなんで「群青忌」と呼び、夏の季語となっています。
生徒の皆さんも是非お気に入りの俳句を見付けて、愛唱句としてください。
きっと日本語の奥深さに触れることができると思います。

読書の夏「青少年読書感想文全国コンクール『課題図書』」(校長室より No.13)

いよいよあと3週間で夏休みとなります。
42日間の長期の休みであり、時間的な余裕も十分にあると思います。
そこで、是非毎日の日課の中に読書の時間を設けてください。
特に、長期の休みは普段読まないジャンルの本に挑戦するチャンスです。
読書は、言葉を学ぶことはもちろん、感性を磨き創造力を豊かにしてくれます。
思春期を迎え、子供と大人の狭間で自分はどう生きるべきか思い悩む今だからこそ、良書に親しむことで、進むべき道が明らかになることもあります。
参考までに今年度の課題図書を以下に紹介します。
本校の図書室には、各課題図書が2冊ずつそろえてありますので、是非借りてください。


『スクラッチ』

コロナ禍で何もかもが中止、延期、規模縮小。今までの日常が奪われ、閉塞感の中で過ごした日々。中学生の4人が、もがきながら未来の自分へと手を伸ばす姿、揺れ動く繊細な心の変化に寄り添ってみてください。

『アップステージ:シャイなわたしが舞台に立つまで』

中学生たちが学校ミュージカルを一からつくりあげていく様子を描いた楽しい物語。恋あり、悩みあり、失敗あり、思わず吹き出してしまう場面も! 作中の「ザ・ミュージック・マン」は現在も上演されている作品です。

『人がつくった川・荒川:水害からいのちを守り、暮らしを豊かにする』

首都圏を貫く荒川は、たび重なる洪水に見舞われた「荒ぶる川」。これまで人の手で何度もつくり変えられてきました。同じような人工の川は日本各地にあります。温暖化による大水害も懸念される今、私たちは川とどう付き合うべきか。


長い夏休み、是非良書に親しんでください。
必ず君の成長を助けてくれるはずです。