日誌

田上教育長日誌

子供にとって楽しい学校にするために

 来週から3年に1度の合同訪問が始まります。かつて、合同訪問の折には、「子供にとって楽しい学校にするために」ということで、次のような話をしました。(合同訪問は、教育事務所や市教委等が学校経営や教育課程等を支援するため、学校を訪問することです)

 いうまでもありませんが、学校は子供のためにあります。ですから、学校は子供にとって楽しくなければなりません。しかし、「楽しい」といっても、単に楽しいという意味の「愉快」や、欲求が満たされたとき楽しい「快楽」という意味ではありません。そこで私は、子供にとって楽しい学校にするためには、特に次のことが重要と考えております。
 まず第一に、「わかる授業」です。学校は勉強するところですから、子供は勉強がわかってはじめて学校の楽しさを感じると思います。そのためには、なんと言ってもわかる授業が不可欠です。しかし、この「わかる」というのは、子供にとってわかるということで、そう簡単ではありません。
 例えば、子供はどのようなときにわかるのでしょうか。教師の説明と実際に体験したときでは、どちらが子供にとってわかりやすいのでしょうか。あるいは、子供にとってわかる教材とは、子供にとってわかる板書とは、子供にとってわかるワークシートとは、などなど、教師は子供にとって「わかる」ということを追究してほしいと思います。
 そのためには、授業研究が大切です。校内授業研究会等により互いに授業を公開し、授業について話し合い、子供にとってわかる授業を追究してほしいと思います。
 次に第二として、「居(い)がいのある学級」づくりです。学校生活の中心は学級です。子供は就寝時間を除くと、家庭で過ごす時間より長く学級で過ごしています。ですから、その学級が居心地が悪ければ楽しくなるわけがありません。したがって、一人一人が認められ大切にされる、子供にとって居がいのある学級づくりに努めていただきたいと思います。
 そして第三として、「子供を生かす教育活動」です。一人一人の子供にはよさがあります。そのよさを認め、引き出し、伸ばすことが教育であり学校の役目です。学校のあらゆる教育活動はそのためのものです。つまり、各教育活動は、子供のよさが発揮され向上することを目的に実施され、教師はそのために適切な指導・支援をしなければならないのです。それが子供を生かす教育活動であり、積極的に取り組んでいただきたいと思います。

 これは、私の基本となる学校観ですので、今年度の合同訪問の際にもお話ししたいと思っています。

校長の言葉は学校組織を動かす

 5月18日(水)に第2回真岡市小中学校校長会がありました。その折りに、次のことをお話ししました。
 
 
 

 「校長は講話で勝負する」と言われますように、校長先生は、児童生徒や教職員、保護者、地域の方々の前で話す機会がたくさんあります。そのため、自分の思いや考えを分かりやすく簡潔に伝えることが何よりも大切になります。しかしながら、これがそう簡単ではなく、同じことを話しても、話す人によって大分印象が違ってしまいます。
  その違いは何でしょうか。話の構成や話し方の抑揚・強弱、話し手の表情等、いくつかの要因はありますが、とりわけ一つ一つの「言葉」は大きく影響します。
 昔から言葉には霊的な力が宿ると言われており、言霊(ことだま)とも呼ばれています。つまり言葉には力があるのです。特に、リーダーにとっての言葉は極めて重要になります。かつての名だたるリーダーをみれば分かりますように、彼らは人を引きつける言葉をもっていました。また、人を動かし、人を引っ張る言葉をもっていたと思います。もちろん、校長先生は学校のトップリーダーですから、校長先生が発する言葉の意味は大きく、「校長の言葉は学校組織を動かす」と言えます。
 「校長先生の仕事は・・・」と言えば、先ずは「考えること」です。「校長室が広いのは、校長が考える場所だから」と森隆夫氏は言っていますが、校長室に限らず、校長先生はいつでもどこでも学校のことを考えています。学校の最高責任者として、児童生徒のこと、教職員のこと、保護者や地域のこと等々、学校内外のあらゆることを常に考えています。
 そして、その考えを確実に伝え人を動かすことが校長先生の仕事です。そのためには発信力が必要であって、言葉が大きな意味をもちます。話し言葉であっても書き言葉であっても、言葉には、その人の品性や識見の高さ、人間性までもが如実に表れます。特に、教職員に対する校長先生の一つ一つの言葉が、信頼と尊敬を集めると言っても過言ではありません。そして、それによってはじめて学校組織が円滑に機能するのです。
  教職員に何をどのように伝えるか、校長先生の言葉が学校組織を動かします。したがって、校長先生は言葉にこだわり、言葉に一層の磨きをかけてほしいと思います。

誠意 愛情 実力 根気

 過日、熊本、大分で発生した大地震では甚大な被害が生じております。お亡くなりになった方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。そして、被災地の一日も早い復旧・復興をご祈念申し上げます。

 さて、あらゆる教育論は突き詰めていくと教師論に行き着くといわれています。つまり、教育の成否は、直接子供たちに関わる教師次第というわけです。そこで、本市の教職員の信条として「誠意・愛情・実力・根気」をお示しします。
   「誠意」とは、何事も誠意ある行動は教職員として人としての基本です。時には失敗や困難もあるでしょうが、誠意をもって対応することが大切
         です。
 「愛情」とは、子供への愛情は教職員にとって不可欠です。子供の心を開くには愛情をもって接することであり、いくつになっても愛情と情熱のあ
         る教職員でありたい と思います。
 「実力」とは、教職員としての実力がなければならないことはいうまでもありません。 特に教師にとっての実力とは、教科指導や児童・生徒指導、
         学級経営などの実践的な指導力です。自己研修等で積極的に研鑽し指導力を磨いてほしいと思います。
 「根気」とは、何事根気強さが大切です。特に教師業は根気強さを必要とします。学習にせよ、児童・生徒指導にせよ、手間暇かけて指導すること
         が求められます。ひたすら子供の成長を願い、根気強く指導・支援していくことが大切です。

 実はこの信条は、私が教師として初めて赴任した小山市立小山第三中学校の職員室に掲げられていたものです。当時、小山第三中学校はまだ開校2年目の学校で、現在では珍しく、3年生がいない1・2年生だけの変則的な学校でした。
 初代校長の稲葉乙彦先生が掲げたこの信条は、教職員の為すべきことをまさに簡潔明瞭に表しています。響きもよく、教師としての第一歩を踏み出した私にとって、新鮮でしかも鮮烈な印象を与えました。以来35年間、この言葉を胸に教師人生を歩んできました。
 私が教師になったのは昭和56年です。その後、時代は移り変わり「平成」となりましたが、いかに変わろうとも、教師としてこの言葉の重みは変わりません。むしろ、経験を積むごとに、その意味するところの深さを強く感じています。
 そして、36年目の今年4月、真岡市教育長を拝命しましたが、未来を担う子供たちを共に育てる教育者としての信条として、この言葉を共有していただければと思います。

学校の決め手は組織力と機動力

 4月12日(火)に、真岡市小中学校長会がありました。その折りに、校長先生方に次のことをお話ししました。

 平成28年度がスタートしました。校長先生の確固たる学校経営方針の下、すべての教育活動が円滑に進められ成果が上げられることを大いに期待しております。そして、子供たちが通ってよかったと思える学校、保護者が通わせてよかったと思える学校、教職員が勤務してよかったと思える学校となりますようご祈念申し上げます。

 
 そこで、一つお話しいたします。
 平成10年の中教審答申「今後の地方教育行政の在り方について」で、「組織的、機動的な学校運営」という言葉が初めて使われました。
 当時の学校は、いじめや不登校、非行等の児童生徒の問題行動が深刻化していました。それだけではなく、学校が外部から閉鎖的であることなどが指摘され、学校の信頼が失われつつありました。そのため、学校が家庭や地域からの信頼を回復し、特色ある教育活動を展開できる「信頼される学校づくり」が急務となっていました。そこで登場したのが、「組織的、機動的な学校運営」という言葉です。
  学校は組織体です。校長、教頭、事務長をはじめ、複数の教職員で組織されています。配置された教職員は、それぞれ特長のある素晴らしい力量をもっています。組織にはそれらを結集することが求められます。「群羊を駆って猛虎を攻む」という諺があるように、たとえひ弱な羊であっても力を結集すれば猛虎にも勝てるのです。組織は1+1が3にも4にもならなければならないのです。そうでなければ、単なる烏合の衆で終わってしまいます。したがって、学校の決め手は「組織力」と言えます。つまり学校は、教職員の力を結集して組織力を発揮できなければならないのです。
  また学校は、何か問題が生じた場合には、即対応、即解決が求められます。学校が信頼されるためにはこれが不可欠です。しかしながら、これはそう簡単ではありません。いじめ問題でも分かるように、学校は後手に回ってしまい、発覚したときには「ときすでに遅し」で、学校の対応の遅れが白日の下に晒(さら)されることになってしまいます。そうならないよう、学校では、問題等の早期発見、適切な初期対応、迅速な諸対応、そして早期解決を図ることが常に求められます。その決め手となるのが「機動力」です。
 「機動」とは、「状況に応じてすばやく行動すること」です。ですから機動隊は、緊急事態のときにのみ出動し、警備や鎮圧に当たります。事態に速攻で対応し、いち早く解決を図ることが求められるのが機動隊です。学校も同様で、機動力を発揮して事に当たらなければならないのです。
  組織力と機動力。これらは平成10年の答申以来、ずっと学校に求められてきた最も必要な力です。よりよい学校運営のため、一層の組織力と機動力アップを期待しています。